我々はこれまでマクロファージが炎症の場において新生リンパ管に分化することや糖尿病によりマクロファージの機能が低下することを報告してきた。一方、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor、 HGF)には血管新生促進作用があることはよく知られており盛んに研究されてきたが、最近HGFリンパ管内皮細胞に作用し、リンパ管新生作用があることも報告され注目されている。HGFの血管新生作用に着目し、閉塞性動脈硬化症などによる下肢虚血患者に対してヒトHGFプラスミドの筋肉内投与が、当科を含めた多施設で臨床治験として行われるなど、血管新生療法としてすでに臨床応用が始まっている。このHGFプラスミドを用いて糖尿病マウスのマクロファージに遺伝子導入を行い、糖尿病条件下により低下した機能がHGFにより改善されるかを検討した。 糖尿病マウス(C57BLKS/J-m^<+/+>Lepr^<db>)より腹腔内マクロファージの分離培養を行った。このマクロファージにHGFの遺伝子をHGFプラスミドとArrest-In^<TM>を用いて導入した。HGFによるマクロファージのリンパ管形成能に対する影響を、Matrigelを用いたtube formation assayにより解析した。HGF遺伝子を導入された糖尿病マウスのマクロファージは、著名な脈管様構造を形成した。 今回の実験で、HGFプラスミドにより糖尿病マウスのマクロファージに遺伝子導入がなされ、低下したマクロファージのリンパ管新生における機能が改善することが確認された。糖尿病性潰瘍においては創傷治癒遅延を認めるが、この細胞を投与することにより創傷治癒の促進作用が期待される。
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