重症薬疹の中で、Stevens-Johnson症候群(SJS)やtoxic epidermal necrolysis(TEN)の発症には、制御性T細胞(Treg)の機能低下によるエフェクターT細胞の過度の活性化が関与し、一部の症例では先行するマイコプラズマ感染によりもたらされることが明らかである。また、皮疹の有無にかかわらず薬疹を発症していないマイコプラズマ感染患者は共通して、同様のTreg機能の低下を示し、この低下は感染症状が消失しても長期にわたり継続することが判明している。一方、ある一定の薬剤に起因して生じる薬剤性過敏症症候群(DIHS)では発症早期にTregの数的増大・機能的亢進が生じており、このためヘルペスウイルスの再活性化が引きおこされ、多彩な臓器障害がもたらされる。しかしながら、原因薬剤や薬剤投与期間が典型的なDIHS症例と同じであってもウイルスの再活性化をきたさず、重症化しない非典型的な経過をとる症例が存在する。本年度はこのような非典型的なDIHS症例に注目し、どのような因子がこのような臨床像をもたらすのかについて検討を試みた。この結果、これらの一部の症例では薬剤リンパ球刺激試験が早期から陽性を呈し、臨床症状は呈さないもののマイコプラズマ感染が検出された。この所見を基に、さらに末梢血のTregについて数的・機能的に解析したところ、これらの症例では典型的DIHSで認められるTregの増加が全く検出されず、機能的にも健常人のそれと比べて明らかに低下していた。すなわち、マイコプラズマ感染はSJSやTENの発症を誘導する1つの因子として作用する一方で、DIHSに対しては抑制的に作用する可能性が示唆された。今後はこの基礎データを踏まえて薬剤添加がマイコプラズマ感染により低下したTregの機能を回復させるかどうかという研究へ進展させる予定である。
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