研究概要 |
Thymic stromal lymphopoietin(TSLP)はアトピー性皮膚炎(AD)患者の発症部位のケラチノサイトに高発現し、アレルギーTh2応答のマスタースイッチとしての役割を担うサイトカインである。本研究の目的は、TSLP発現を誘導する環境因子および自己因子を探索し、機序およびAD発症および慢性増悪化サイクルにおける役割の解明を目指す。本年度の研究実績は以下の通り。 1. アッセイ系最適化:培地からのステロイド除去のタイミングやケラチノサイトの分化誘導により、TSLP誘導因子in vitroアッセイ系を最適化した。 2. 黄色ブドウ球菌によるTLR2/TLR6依存的TSLP誘導:黄色ブドウ球菌とADの関連はよく知られているが、その間を何が介在するかについては不明である。黄色ブドウ球菌成分によるTSLP分泌誘導を調べたところ、膜画分に最も強い活性を認めた。TLR2/TLR6リガンドである合成ジアシル化リポペプチドもTSLP分泌を誘導した。膜画分によるTSLP mRNA誘導はTLR2およびTLR6のsiRNA導入によって抑制された。黄色ブドウ球菌が産生するジアシル化リポタンパク質が、TLR2/6リガンドとしてケラチノサイトのTSLP産生を刺激し、アトピー性皮膚炎の発症の起点あるいは増悪化に関与することが示唆された。 3. 細菌鞭毛構成タンパクFlagellinによるTLR5依存的TSLP誘導:FlagellinはTSLP分泌を誘導し,TSLP mRNA誘導はTLR5のsiRNA導入によって抑制されることを明らかにした。
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