研究課題/領域番号 |
22591251
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
高井 敏朗 順天堂大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (70338375)
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キーワード | アレルギー / アトピー性皮膚炎 / ケラチノサイト / TSLP / 経路 |
研究概要 |
Thymic stromal lymphopoietin(TSLP)はアトピー性皮膚炎(AD)患者の発症部位のケラチノサイトに高発現し、アレルギーTh2応答のマスタースイッチとしての役割を担うサイトカインである。本研究の目的は、TSLP発現を誘導する環境因子および自己因子を探索し、機序およびAD発症および慢性増悪化サイクルにおける役割の解明を目指す。本年度の研究実績は以下の通り。 1.ヒトケラチノサイトの2本鎖RNA刺激によるTSLP産生のメカニズム解析:我々は過去に2本鎖RNA刺激によってヒトケラチノサイトがTSLPを分泌することを報告したが(Kinoshita et al.JACI2009)、刺激経路は不明であった。我々の報告の後、他の研究グループが、センサーとしてTLR3(endosome局在)ではなくRIG-lおよびPKR(cytoplasmに存在)の重要性を示すデータと、転写因子としてNF-kBよりIRF3が重要であるとの推察を含む報告を行っている(Seidl et al.JACI2009)。しかし、我々は予備検討で彼らとは相反する実験結果を得ており、今回、検討を進めた。その結果、endosomeの酸性化の阻害剤添加およびRelA(NF-κB構成分子のひとつ)siRNA導入によりTSLP発現が阻害されることを示し、報告した(Vu et al.JID2011)。IRF3 siRNA導入はTSLP発現に影響を与えなかった。TLR3-NF-κB経路の重要性が示唆された。 2.In vitroでのTSLP産生の促進・阻害因子について探索・作用機序解明を継続中である。 3.In vivoでのTSLP産生の促進.阻害について予備検討を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H22年度にADで重要な黄色ブドウ球菌成分によるTSLP誘導を初めて報告した意義は大きい。他の菌体因子であるフラジェリンの作用についても報告した。これらの菌体成分によるTSLP誘導は自己因子であるサイトカイン群により増強あるいは抑制されることを報告した。H23年度は、ケラチノサイトの2本鎖RNA刺激によるTSLP産生に関与する経路を解析し報告した。in vivo実験の予備検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
実験系の構築について、条件検討に時間を要したものがある。アレルゲンin vitro刺激については予備検討の段階にある。一方、計画にはなかった新知見も得られている。 最終年度のH24年度は、3年間の研究成果を最大化すべく、有望な新規課題へのスイッチや追加を行い、一方、結論の出ていない課題については検討を継続する。
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