研究概要 |
Thymic stromal lymphopoietin (TSLP)はアトピー性皮膚炎(AD)患者の発症部位のケラチノサイトに高発現し、アレルギーTh2応答のマスタースイッチとしての役割を担うサイトカインである。本研究の目的は、TSLP発現を誘導する環境因子および自己因子を探索し、機序およびAD発症および慢性増悪化サイクルにおける役割の解明を目指す。本年度の研究実績は以下の通り。 1. long form TSLP mRNA転写とTSLPタンパク質発現:我々は昨年度までの研究で、TLRリガンドおよびサイトカイン刺激がヒトケラチノサイトにTSLP分泌を誘導することを明らかにした。本年度は、これらのいずれの刺激でも、誘導されるのはlong form RNAであることを明らかにし、TSLP誘導因子や抑制因子の探索においてlong form TSLP mRNAの特異的検出が極めて高感度な方法として利用できることを示した(Xie Y. et al., J Dermatol Sci 2012)。 2. 内在性のヒト抗菌ペプチドLL-37がTLR3刺激によるTSLP発現を抑制することを見いだした。興味深いことにLL-37は、Th17サイトカイン刺激によるIL-6およびCXCL8産生を顕著に増強し、TNF/IFN-gamma刺激によるCXCL8産生を増強・CCL5およびCXCL10産生を抑制した。LL-37が、TSLPが関与するTh2型皮膚炎症、およびTh17やIL-6が関与する乾癬に、それぞれ抑制的および促進的に作用する可能性がある(Chen X. et al., BBRC 2013)。 3. これまでに同定した因子および新規因子について、In vitro での作用機序およびIn vivoでの効果について、引き続き検討中である。
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