研究課題/領域番号 |
22591253
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
石井 則久 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター, センター長 (50159670)
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研究分担者 |
鈴木 幸一 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター・感染制御部, 室長 (20206478)
森 修一 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター・感染制御部, 室長 (40559522)
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キーワード | 感染症 / 細菌 / ハンセン病 / らい菌 / 細胞内寄生 |
研究概要 |
今年度は、昨年度に引き続いてらい菌において高率に発現する遺伝子群のin silico解析を継続するとともに、新たに、らい菌が感染することによって起こる宿主細胞であるマクロファージの遺伝子発現変化について研究を行った。特に、感染後の細胞内寄生を可能にするために、菌側が宿主遺伝子発現変化を誘導することによって自身の生存に有利な細胞内環境を構築することに寄与すると考えられるような遺伝子発現に重点を置いて検討を行った。具体的には、これまでも検討を行ってきたCORO1Aに加えて、ファゴゾーム内の脂質蓄積に関わる因子であるADRPやperilipin、あるいは蓄積された脂質の分解に関わる酵素であるHSLなどの遺伝子発現、タンパク量、タンパクリン酸化およびその細胞内局在などの変化について、THP-1細胞にらい菌を感染後経時的に、RT-PCR,realtime PCR,Western blottingおよび免疫染色などを用いて評価した。その結果、らい菌生菌感染によってHSL発現および蛋白のリン酸化が強く抑制されることがあきらかになり、その結果感染細胞内の脂質の異化作用が抑えられ、菌に利用されやすい環境を作り上げることで細胞内寄生を可能にしているのでは無いかと考えられた。また、らい菌の細胞壁成分であるペプチドグリカンは感染細胞上に発現するTLR2によって認識され、宿主細胞が持つ自然免疫反応が活性化することによって菌の排除機構が働くと考えられるが、らい菌の生菌感染によって、ペプチドグリカンによるTLRシグナル活性化の結果として起こる遺伝子発現変化が抑制されることも明らかにした
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
らい菌感染によるHSLの発現変動が細胞内寄生に重要である可能性が強く示唆される結果が得られ、臨床検査に応用できる道が開けた。
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今後の研究の推進方策 |
臨床材料を用いてHSLの発現状況を検討することで、確実な臨床検査法として応用すべく検討を行うが、国内では症例が少ないためにそのようなサンプルの収集は容易ではない点が問題である。
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