研究課題
2009年のGWAS報告の結果と今回新たに行なったGWASを基にメタ解析を行い(患者718名、健常対照1717名)、候補部位33か所を同定し、TaqMan解析法を用いて、独立したサンプル(患者329名、健常対照861名)にて確認実験を行った。その結果、8番長腕(8q23-q24)に位置するSNTB1(syntrophin beta 1)遺伝子が有意な関連を持つことが分かった(OR=0.67)。syntrophin遺伝子は、神経伝達物質との結合やその輸送体の神経膜への移動などを行なう蛋白を生成する。また統合失調症関連遺伝子のDysbindin(DTNBP1)遺伝子と複合を作ることも報告されている。他にも神経伝達物質のアドレナリン受容体との結合を通じて血圧の調整を行っている。パニック障害に心血管系疾患の合併率が多いことからも興味深い結果と考える。この他にも、2つのGWAS解析の結果からパスウェイ解析を行い、神経膜の輸送体や細胞接着、カルシウム伝達などのパスウェイが有意に関連することが見出された。こうした関連パスウェイに含まれる遺伝子としては、CDH13,CTNNA2,RELN,NRXN1,CACNA2D1,GRIN2B,ITPR3などの大きく分類して、神経発達関連遺伝子群と神経伝達遺伝子群があることが示唆された。以上、これまでの不安障害を含めた報告の中では最大規模の解析結果からSNTB1ならびにその他の有意な遺伝子群がパニック障害に関連することが分かった。一方で、一つ一つの遺伝子の病気に及ぼす影響は小さいことから、多数の遺伝子の相互作用ならびに環境との相互作用から疾患発症につながる可能性も示唆された。
2: おおむね順調に進展している
メタ解析を行い(患者718名、健常対照1717名)、候補部位33か所を同定した。TaqMan解析法を用いて、独立したサンプル(患者329名、健常対照861名)にて確認実験を行い、有意な関連をもつ遺伝子(8番長腕)を見出している。2つのGWAS解析の結果からパスウェイ解析を行い、神経膜の輸送体や細胞接着、カルシウム伝達などのパスウェイが有意に関連することを見出した。以上、順調に研究が進んでいると考える。
今後の研究について、サンプル規模の拡大、PAN・ICなどのコンソーシアムを通じての他研究グループとの共同研究の継続、遺伝子間相互作用解析を通じての候補遺伝子の確認、特に今回見出された遺伝子群を中心に検討する。また、不安障害はコモンディジーズとしての特徴があることから、症状の個人差を考え、rare variantsや、structual variantsなどを検討する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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