研究概要 |
私どもは既に、大分県内の18市町村における水道水中リチウム濃度と自殺率の間に有意な負の相関があることを突き止め、British Journal of Psychiatry (Ohgami et al, 2009)へ掲載した。この時の研究では、水道水中リチウム濃度の測定点が少ないことと、自殺率に影響を与える可能性のある社会経済的要因、医療的要因、気象的要因、栄養的要因などを考慮していないことが限界であった。そこで今回の研究の目的は、対象地域を九州全域に広げることにより、水道水中リチウム濃度の測定点を増やしつつ、自殺に関連する可能性のあるさまざまな要因も調査し、これらの要因で補正しつつ解析を行うことで、本当に水道水中リチウム濃度と自殺率の間に負の相関があるかどうかを検討することである。今年度は、九州8県のおよそ半数の市町村役所、駅から水道水を採取し、また各県の水道局に依頼する事で計151検体を確保した。 これらの検体中の水道水中リチウム濃度は0.1~43μg/Lの間に分布しており、地域差の大きなことが再確認された。来年度も引き続き、未採取の市町村における水道水採取を続けていく。なお、今年度の作業のひとつとして厚生労働省に出向き、各県の人口動態や自殺率などのデータを得た。自殺に関連する要因に関しても、さまざまなデータを調査中であり、来年度も続ける。また、今回の研究の延長線上にある業績として、大分県の水道水リチウム濃度と総死亡率との間にも有意な負の相関を認めたので、ドイツのJena大学と共同研究を行ない、European Journal of Nutritionに論文を掲載した。
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