研究課題/領域番号 |
22591270
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
山田 裕一 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 遺伝学部, 室長 (70191343)
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キーワード | 良性けいれん / ナトリウムチャネル / 遺伝子変異 / 連鎖 / 遺伝子診断 |
研究概要 |
本研究は、愛知県心身障害者コロニー中央病院で加療中の新生児および乳児性けいれんの大家族に注目し、その病因遺伝子の解明すること、そして原因遺伝子変異の簡便な検出法を確立して、遺伝子診断法として臨床の場に還元することを目的とした。発達遅滞や精神遅滞の見られない良性家族性乳児性けいれんの原因遺伝子としては、カリウムチャンネルやナトリウムチャネルの遺伝子が考えられる。家系の連鎖解析で病因遺伝子座をD2S142とD2S335間(最大Lodscore 2.1)に絞り込んだ。この染色体2q23-24領域にはナトリウムチャネル遺伝子群(SCN1A,SCN2A,SCN3A,SCN7A)が座位していた。これら候補遺伝子の変異解析から得られた新たな病因候補遺伝子SCN7Aの塩基置換(IVS18+7A>G)が原因変異である確証を得るために、変異によるスプライシング異常の可能性を検索した。Bリンパ芽球を株化した培養細胞を用いたmRNAの解析や、SCN7A cDNAに塩基置換部位を含むイントロン18の一部を組み込んだミニキメラジーンを構築してベクターに組み込んだ発現実験では、候補となる塩基置換(IVS18+7A>G)が異常mRNAを発現するという確証は得られなかった。また本症は常染色体優性遺伝ということで、遺伝子の欠失の可能性も視野に入れ、新たにアレイCGH分析を行ったが、原因となり得るような染色体欠失は認められなかった。現在、他の遺伝子変異が原因であることも考慮して、家計内の罹患者と非罹患者の全遺伝子のエクソーム解析を行い、分析データの解析中である。今後さらに、異常mRNAの確認実験をすすめるとともに、他の遺伝子変異の可能性も視野に入れて研究を進めて原因探求に努める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
病因候補遺伝子SCN7Aのイントロン18の5'末近傍に同定された塩基置換(IVS18+7A>G)がスプライシング異常を引き起こすという確証が得られないため、他の遺伝子の変異や欠失を視野にいれてアレイCGH分析や全遺伝子のエクソーム解析を行って実験を進めており、当初の研究計画において達成度の遅れが生じてきている。
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今後の研究の推進方策 |
以下のように塩基置換IVS18+7A>Gによる異常mRNAの確認実験を行うとともに、他の遺伝子変異の可能性も視野に入れて研究を進める。 1)正常アレルからの正常mRNAの発現が異常mRNAの検出の妨げになっている可能性もあり、培養Bリンパ芽球のSCN7A mRNAをさらに詳細に解析し、異常mRNAの発現を精査する。 2)異常mR:NAの検出を可能にするミニキメラジーンを構築し発現実験を行って原因変異を実証する。 3)他の候補遺伝子SCN1A,SCN2A,SCN3Aについても、mRNAを詳細に分析して異常の有無を確認する。 4)塩基置換IVS18+7A>Gのスクリーニングをボランティアの正常群を対象に行う。 5)全遺伝子のエクソーム解析の結果を精査して、他の遺伝子変異の可能性を検討する。
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