研究概要 |
本研究は、愛知県心身障害者コロニー中央病院で加療中の新生児および乳児性けいれんの大家族に注目し、その病因遺伝子の解明すること、そして原因遺伝子変異の簡便な検出法を確立して、遺伝子診断法として臨床の場に還元することを目的とした。発達遅滞や精神遅滞は見られない良性家族性乳児性けいれんの原因遺伝子としては、カリウムチャンネルやナトリウムチャネルの遺伝子が考えられるが、家系に連鎖の見られた染色体2q23-24領域にはナトリウムチャネル遺伝子群(SCN1A, SCN2A, SCN3A, SCN7A)が座位しており、これら候補遺伝子の全エクソンと隣接するスプライス部位の変異解析を行い、新たな病因候補遺伝子 SCN7A に塩基置換を同定した。同定された塩基置換(IVS18+7A>G)はイントロン18の5’末近傍で起きており、変異によるスプライシング異常が推測された。そこでBリンパ芽球を株化した培養細胞を用いてmRNAを解析したが、異常mRNAの発現の確認には至らなかった。正常アレルからの正常mRNAの発現が、異常mRNAの検出の妨げになっている可能性もあり、SCN7A cDNAに塩基置換部位を含むイントロン18の一部を組み込んだミニキメラジーンと、同様に正常イントロン配列を組み込んだジーンを構築して発現ベクター(pCI)に組み込み、ヒト培養細胞(HEK293)中で発現の観察を試みたが、変異が異常mRNAを発現するという確証は得られなかった。ごく最近になってIVS18+7A>Gが非常に稀な遺伝子多型(A:0.992, G:0.008)であるとの報告があり、遺伝子の欠失の可能性も視野に入れ、新たにアレイCGH分析を行ったが異常は認められなかった。また、症例と健常な兄弟の全遺伝子をエクソーム解析し、両者の比較解析を行ったが、病因の解明には至っていない。
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