大学病院を受診する12歳から18歳の思春期患者で、構造化面接(SIPS)により精神病前駆状態(ARMS)の基準を満たすものを74名抽出し、12か月経過観察したところ、ARMSから統合失調症を発症する割合は23%であった。さらにARMS患者74名の併存疾患を調査したところ、60%が広汎性発達障害(PDD)の診断基準を満たすことをあきらかにした。その多くはPDD-NOSであり、また12ヶ月観察時点での統合失調症顕在化のリスクはアスペルガー障害ではPDD-NOSやNPDDと比べ、低い可能性が示唆された。生物学的サンプルについては現在解析中である。 また90名の思春期ARMSにおいてBACS-Jおよび WAIS-IIIあるいはWISC-IIIを施行し、顕在発症群と非顕在化群に分けて比較検討を行った。顕在化群ではARMSの段階で認知機能障害が始まっていることが示唆された。構造化面接(SIPS)および認知機能検査BACSから統合失調症の顕在化を予測する指標を解析したところ、幻覚・妄想の段階的な悪化と注意、記憶など低下が予測指標として示唆された。 思春期ARMS患者の抗うつ薬SSRIによるActivation symptomsの 10項目の出現について統合失調症発症群と統合失調症未発症群で比較すると易過敏性は両群50%と同等であったが,敵意,衝動性は発症群で50%だったのに対し未発症群では20%の出現率であった.全体的にみるとActivation symptomsの項目は抑うつの改善とともに消失するものもあり,risk & benefitが確認された.他の薬物療法の効果と安全性、妥当性の検討については現在解析中である。
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