研究概要 |
本研究は、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を行った際の脳血液量変化を近赤外線スペクトロスコピィNIRSを用いて測定することにより、気分障害(大うつ病性障害、双極I型障害、双極II型障害)、および適応障害における脳機能の特徴を明らかにし、適正な刺激条件の設定を目的とするものである。初年度の研究計画としては、患者群における対側の反応測定を行った。対象は、当科外来通院中、および入院中の患者とし、初回診察時に構造化面接にて診断を行い、気分障害(大うつ病性障害、双極性障害)、および適応障害と考えられる症例を対象とした。rTMSは、附属病院精神科神経科の病棟脳波室に装置されている、8字コイルを装着した装置を使用し、刺激条件は、刺激頻度1Hz,持続60秒間,刺激機器強度は100%RMT、前頭前野背外側相当部位とされる位置に刺激を行い、疑似刺激条件も設定した。rTMSに伴う対側の脳機能変化の測定は、病棟脳波室に装置済みのNIRS装置を用い、チャンネル1-3を磁気刺激位置の対側に位置するように設置した。健常者での予備的検討では、刺激中に対側前頭前野の脳血液量減少を認め、またこの反応は刺激強度依存性であった。疾患群での検討では、まず双極性障害では健常者と同様の変化、すなわち刺激中の酸素化ヘモグロビンの減少を認めた。一方、うつ病では明らかな刺激中の低下を認めなかった。疑似刺激では、各群で刺激中の変化は小さなものに留まったが、双極性障害のみ異なる反応を示していた。適応障害では、少数例の検討ではあったが、健常者と同様の変化が示された。今年度は、この反応の状態像による相違や変化を検討するため,初年度研究に参加した症例をフォローアップし、再度rTMS中のNIRS測定、および臨床症状の評価や服薬薬剤のチェックを行うことで、各疾患における状態像による反応の特徴を検討する。更に検討を進めている、広い脳部位での反応測定が可能なNIRSプローブの試作も行う。
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