研究課題/領域番号 |
22591275
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高橋 努 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 助教 (60345577)
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研究分担者 |
鈴木 道雄 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 教授 (40236013)
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キーワード | 磁気共鳴画像 / 統合失調症 / 統合失調型障害 / 下垂体 / 側頭葉 |
研究概要 |
精神疾患における脳形態変化の疾患特異性を明らかとする目的で、本年度は主に初回エピソード統合失調症と統合失調型障害における縦断的脳形態変化の特徴を検討した。すなわち、磁気共鳴画像(MRI)を用いて、1から4年の間隔で2度の撮像がなされた初発統合失調症群18例、統合失調型障害群13例、および健常群20例を対象に、側頭回の各部位および下垂体の進行性形態変化を比較した。これらの結果を以下にまとめる。 1.側頭葉領域:統合失調症群における紡錘状回体積減少の程度(左,-2.6%/年:右,-2.3%/年)は、統合失調型障害群および健常群(-0.4%から0.1%/年)と比較して有意に大きかった。統合失調症群において、フォロー期間中の抗精神病薬の総投薬量が多いほど左紡錘状回体積減少の程度は小さく、また同部位の体積減少の程度はフォロー時の)SANS総得点と有意に相関した。中および下側頭回ではいずれの群においても有意な進行性体積変化は認めなかった。 2。下垂体;健常群における経時的な体積減少(-1.8%/年)に対し、統合失調症群(3.6%/年)および統合失調型障害群(2.7%/年)において下垂体体積の進行性増大がみられた。統合失調症群における体積増大の程度は、妄想の改善不良と有意に相関した。 これらの結果から、統合失調症における進行性脳形態変化の特徴がある程度明らかとなった。すなわち病初期に紡錘状回に進行性体積減少が生じるのに対し、他の側頭葉領域には明らかな変化はなく、さらにこれらの変化は統合失調症圏のなかでも統合失調症に特異的と考えられた。また抗精神病薬が進行性の病的過程を和らげる可能性が示唆された。下垂体体積増大は視床下部-下垂体-副腎系を介した共通のストレス脆弱性を反映する変化と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統合失調症の脳形態の特徴については着実に知見を蓄積することができた。脳形態を用いた判別分析による補助診断の取り組みについては解析の前段階(画像の下処理中)である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗はおおむね順調である。ただし画像解析技術の進歩に伴い、最新の解析方法に習熟した他施設と共同してより精微な解析を目指すことも考えている。
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