研究課題
本研究では未就学幼児(3~7歳)を対象として、共感に関連する2つの脳活動計測実験を行った。まず一つ目の実験では定型発達児46名に対し、3種類の異なる映像を見せながら触覚刺激を指に与え、そのときの脳活動を幼児専用の脳磁計で測定した。解析には計測中の身体の動きに由来するノイズのない15名のデータのみを用いた。その結果、刺激から75~125 ms後に起こる脳の誘発反応が、誰かの指が物体に触れる映像を見ている時に僅かに増大した一方、足が触れる映像を見ているときには減少する傾向が確認された。これは未就学児の触覚反応が、他人の同じ部位の接触を見ることに影響されることを示唆しており、幼児の共感を反映した脳活動であると考えられる。そこで我々は共感が脳の反応に与える影響を調べるため、二つ目の実験として定型発達児と自閉症スペクトラム障害を持つ幼児の2群各25名を対象に、通常の発話音声と囁き声から成る言語連想テストを聴取しているときの脳活動を計測した。囁き声は通常の発話音声と比べ、より自分に対して話しかけているように感じさせることができるため、共感による音声内容の理解を強調する条件であると考えた。なおこの実験において我々は、MEGと比べて測定中の身体の動きに対する拘束が少なくて済み、幼児への計測が容易である近赤外分光装置(NIRS)を用いて脳活動を測定した。実験の結果、定型発達児では右側前頭前野が、自閉症スペクトラム障害児ではそれに加えて両側側頭葉が、通常の発話音声よりも囁き声を用いた刺激に対して大きな血流応答を示した。この結果は自閉症スペクトラム障害児のほうが、囁き声に対してより強く反応したことを示唆している。しかし、反応の差が音声自体の認知処理に由来するものなのか、誘発された共感に由来するものなのか、さらなる検証が必要である。本成果は国際学術論文誌への投稿を準備中である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://bambiplan.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html