研究課題
自閉症における脳内グルタミン酸異常の根拠を示すため、MRS(核磁気共鳴スペクトロスコピー)を用いて、脳内代謝物質の測定を実施した。【対象の選定、評価、方法】 20歳以上の成人自閉症者50人と性別、年齢が一致した健常者50人を対象の目標人数とした。診断には、ADIR(Autism Diagnostic Interview-Revised)を用いた。知能・精神症状の評価には、WAIS-RもしくはWAIS-III、ADOS(Autism Diagnostic Observation Schedule)を用いた。紘仁病院(名古屋市)のGE社製の3T MRIを用いて、脳構造画像、白質神経線維のDTI(拡散強調テンソル)画像、MRS(小脳虫部、内側前頭皮質、基底核、海馬+扁桃体)の撮影を行った。解析方法は、脳構造画像についてはSPM5、DTI画像についてはFSLとSPM5を使用した。MRSの代謝物質(ミオイノシトール、コリン、クレアチニン、グルタミン酸、グルタミン酸+グルタミン)については、LC-modelによる濃度解析、FSLにより関心領域内の灰白質・白質・脳脊髄液を分離し、補正を行った。濃度の2群間比較は両側T testにより実施した。【中間報告】 平成23年3月現在、自閉症者20人、健常者18人の撮影が実施済みである。対象者の内、自閉症者1人と健常者2人は、脳器質的異常のために除外された。自閉症群19人、健常群16人を解析した結果、脳構造画像では、clusterlevel(p corrected<0.05)で灰白質と白質の2群間に有意に差異のある脳部位は認められなかった。DTI画像では、拡散テンソルのパラメーターであるFA(Fractional Anisotropy)値を算出した結果、cluster levelで2群間に有意に差異のある脳部位は認められなかった。MRSでは、海馬+扁桃体のグルタミン酸が自閉症群で有意に増加して旨いた(p=0.02)。他の脳部位、代謝物質に2群間で違いは認められなかった。今後は、対象人数を増やし、両群間の違いを明らかにしていく予定である。
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http://www2.hama-med.ac.jp/w1b/psy/index.html