研究課題
自閉症における脳内グルタミン酸異常の根拠を示すため、MRS(核磁気共鳴スペクトロスコピー)を用いて、脳内代謝物質の測定を実施した。【対象の選定、評価、方法】20歳以上の成人自閉症者50人と性別、年齢が一致した健常者50人を対象の目標人数とした。診断には、ADIR (Autism Diagnostic Interview-Revised)を用いた。知能・精神症状の評価には、WAIS-RもしくはWAIS-III、ADOS (Autism Diagnostic Observation Schedule)を用いた。紘仁病院(名古屋市)のGE社製の3T MRIを用いて、脳構造画像、白質神経線維のDTI(拡散テンソル画像)、MRS(小脳虫部、内側前頭皮質、基底核、海馬+扁桃体)の撮影を行った。解析方法は、脳構造画像についてはSPM5、DTI画像についてはFSLとSPM5を使用した。MRSの代謝物質(ミオイノシトール、コリン、クレアチニン、グルタミン酸、グルタミン酸+グルタミン)については、LC-modelによる濃度解析、FSLにより関心領域内の灰白質・白質・脳脊髄液を分離し、補正を行った。濃度の2群間比較はMann-Whitney検定により実施した。【中間報告】平成24年3月現在、自閉症者25人、健常者27人の撮影が実施済みである。対象者の内、自閉症者1人と健常者2人は、脳器質的異常のために除外された。自閉症群23人、健常群25人を解析した結果、脳構造画像では、cluster level (p corrected<0.05)で灰白質と白質の2群間に有意に差異のある脳部位は認められなかった。DTIでは、拡散テンソルのパラメーターであるFA (Fractional Anisotropy)値を算出した結果、cluster levelで2群間に有意に差異のある脳部位は認められなかった。MRSでは、治療薬内服者と喫煙者を除いた自閉症群16人、健常群16人を解析した結果、海馬+扁桃体のグルタミン酸+グルタミンが自閉症群で有意に増加していた(p=0.0072)。また、小脳虫部のグルタミン酸+グルタミンも自閉症群で有意に増加していた(p=0.0249)。他の脳部位、代謝物質に2群間で違いは認められなかった。
3: やや遅れている
DTIの偶数軸の撮像条件が必要なためMRIの機械をバージョンアップした結果、時間を要し、計画進行にやや遅れが出現した。
今後は、MRSのデータ取得については、現在の人数で終了とし、これまでのMRSのデータを論文化し、英文雑誌に投稿する予定である。一方、脳構造とDTIについては、引き続きMRIデータの取得を継続する。また、脳構造とDTIでは関心領域を絞った解析方法などを施行し、自閉症群と健常群との差異を明らかにして行く方針である。
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J Neuroscience
巻: 31(31) ページ: 11193-9
10.1523/JNEUROSCI.2535-11.2011
PLoS One
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http://www2.hama-med.ac.jp/wlb/psy/index.html