研究課題/領域番号 |
22591285
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
根來 秀樹 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (80336867)
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研究分担者 |
太田 豊作 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10553646)
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キーワード | ADHD / NIRS / Stroop課題 / metylphenidate徐放剤 / ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 / atomoxetine / 前頭葉 |
研究概要 |
我々はStroop課題という前頭葉賦活課題を用い、定型発達児とADHD児の検査結果を比較検討することにより、ADHD児は定型発達児に比べ、Stroop課題施行時に前頭葉で酸素化Hb(血流の指標となるとされる)の上昇が悪く、NIRSが補助的診断に有用であることを示した(Prefrontal Dysfunction in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder as Measured by Near-Infrared Spectroscopy.Negoro H et al,Child Psychiatry Hum Dev.41(2):193-203.2010)。 現在本邦では、metylphenidate(MPH)徐放剤とノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるatomoxetineがADHD治療の適応取得済みである。しかし、両剤とも薬物療法の効果に関する客観的指標の研究が進んでいない。よって、これらの治療薬の投与後、治療薬に反応した群と反応しなかった群に分け、臨床症状の改善または悪化、不変などが我々が示したNIRSのデータ(投与前後で2回施行)と相関関係があるのかを分析し、NIRSが薬物療法効果の客観的指標になる可能性があるかを検討していくことが本研究の目的である。 本年度はMPH徐放剤の反応群(臨床的に効果があった群)の10例、atomoxetineの反応群3例で検討したがいずれも服薬後では服薬前に比べ、前頭葉の血流が増加していた。よって今後もStroop課題を今後も修正無く使用でき、また前述した研究の再現性も検証できたと考えている。 これらの結果は治療薬で臨床上効果があった症例では、NIRSのデータも改善している可能性を示唆し、今後NIRSが治療薬の効果判定の客観的指標となりうる可能性がある。 今後は症例数を増やし、統計的解析を行えるようにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床的に治療薬に効果がなかった症例についても多数例のNIRSを測定する予定であったが、実際にはそのような場合は治療薬投与後のNIRSが測定できない場合が多かった。これは臨床的に症状が改善しない場合は研究の参加者(及びその保護者)が早期に治療薬の変更または中止を求めるためであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の参加者(及びその保護者)の意思、また研究の参加者が児童であることを考えると、臨床的に治療薬が効果がない場合に同内容の投薬を継続することは倫理的に無理がある。その場合も治療薬変更前や中止直前にNIRSを測定すればよいのかもしれないが、NIRS測定をその時々に行うのは物理的に困難である。また治療期間に差がでれば、統計学的にもそのデータを同等に扱えなくなる。よって当初の研究計画を変更し、治療薬に効果があった症例の投与前後のNIRSを比較することに重点をおきたい。その場合も二剤のデータの差の検証は行いたい。
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