研究課題/領域番号 |
22591286
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
新野 秀人 香川大学, 医学部, 准教授 (10393430)
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キーワード | 軽度認知障害 / アルツハイマー病 / 睡眠ポリグラフ検査 / レム睡眠 / 徐波睡眠 / 移行ハイリスク |
研究概要 |
1.研究の重要性・意義・目的 軽度認知障害(mild cognitive impairment ; MCI)のうちアルツハイマー病(AD)に移行する症例においては、AI)前段階としての評価を早期に行い、早期に治療的介入を開始することが望まれる。本研究では、1)MCI患者の睡眠構造の特徴を明らかにすること、2)MCIの予後と相関のある睡眠医学的因子(睡眠構造、睡眠時ミオクローヌス(PLM)など)を見いだすことを目的としている。ADのハイリスク群を睡眠医学的観点から検証していきたい。 2.研究方法 平成23年度末までに、認知機能正常群(対照群)、MCI群、AD群(各群20例)で睡眠構造の特徴を比較した。本研究は、倫理委員会の承認を得た。全例で文書同意を得た。 3.成果 対照群の総睡眠時間333.3時間、睡眠効率68.3%、総睡眠時間に占める各睡眠段階の割合(非レム第1+2段階74.2%、第3+4段階9.9%、レム睡眠15.9%)、PLM指数21,1回/時だった。MCI群の総睡眠時間323.4時間、睡眠効率67.3%、総睡眠時間に占める各睡眠段階の割合(非レム第1+2段階78.3%、第3+4段階7.9%、レム睡眠13.8%)、PLM指数23.1回/時だった。AD群の総睡眠時間277.9時間、睡眠効率60.1%、総睡眠時間に占める各睡眠段階の割合(非レム第1+2段階89.0%、第3+4段階3.1%、レム睡眠7.9%)、PLM指数24.3回/時だった。 4.まとめ AD群では他群と比べて総睡眠時間、徐波睡眠、レム睡眠の割合が有意に減少していた。PLMには差異がなかった。MCI群を対照群と比較すると、レム睡眠の有意な減少がみられた。睡眠医学的特徴においてもMCIは正常な老化と認知症の中間であると考えられる。アセチルコリン系神経伝達の減少にまり、レム睡眠が減少することが知られている。MCI群には既にレム睡眠の減少した症例があった。今後の認知機能の経過を評価する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)各々において目標症例数(20例)の参加を得た。MCI群、AD群および対照群の間で睡眠構造を比較し前述した知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
軽度認知障害(MCI)の20例について観察を継続し、認知機能や生活機能などについて定期的評価に行う。2年後までにアルツハイマー病(AD)に移行した(MCI→AD)群とMCIのままでADに移行していない(MCI→MCI)群に分ける。両群でMCIの時点で実施した睡眠ポリグラフ検査変数(総睡眠時間、睡眠効率、レム睡眠、非レム睡眠第1+2段階、非レム睡眠第3+4段階、睡眠時ミオクローヌス指数など)を比較する。 両群間で統計学的有意差を示す変数を見いだすことで、ADに移行する患者でMCIの時点で既に差異を示している因子が特定できる。
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