研究課題
1.研究の重要性・意義・目的: 軽度認知障害(mild cognitive impairment; MCI)のうちアルツハイマー病(AD)に移行する症例においては、AD前段階としての評価を早期に行い、早期に治療的介入を開始することが望まれる。本研究では、1)MCI患者の睡眠構造の特徴を明らかにすること、2)MCIの予後と相関のある睡眠医学的因子(睡眠構造、睡眠時ミオクローヌス(PLM)など)を見いだすことを目的としている。ADのハイリスク群を睡眠医学的観点から検証していきたい。本年度は、2)についての解析を進める。2.研究方法: MCI25例において、①エントリーから2年間後に認知機能や生活機能などを評価して、ADに移行しているかどうかを診断した。②MCIのままであった群(MCI群)とADに移行した群(AD移行群)の2群にグループ分けした。③両群間で、エントリー時に施行した睡眠ポリグラフ検査(PSG)の変数を比較した。なお、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症例では、同疾患によるPSG変数への影響が大きいため(同意取得時にSASを疑う病歴がなかった場合にも)除外した。本研究は、倫理委員会の承認を得た。全例で文書同意を得た。3.成果:25例のうち6例がSASのため除外された。19例(男性9例、女性10例、平均年齢70.8歳)がADへ移行したかどうか診断できた。MCI群が13例、AD移行群が6例だった。PSG変数のうちレム睡眠時間がAD移行群では有意に短縮していた(p=0.043)。4. まとめ: MCI群と比較してAD移行群では、MCIの時点ですでにレム睡眠が有意に短縮していたアセチルコリン系神経伝達の減少により、レム睡眠が減少することが知られている。レム睡眠短縮がMCIからADに移行するハイリスク群を特定する睡眠医学的因子である可能性を見いだした。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度末の時点で予定していた25症例において、2年間の臨床評価を終えることができた。MCIのままであった群(13例)とADに移行した群(6例)の両群へのグループ化ができた。
まだエントリーから2年が経過していない3症例において、ADに移行したかどうかの評価を行う。すでにグループ化を済ませた症例と併せて、すべてのデータ(臨床背景、認知機能、生活機能、睡眠ポリグラフ検査所見など)について2群間での比較検定を完了する。
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睡眠医療
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Geriatric Medicine (老年医学)
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睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究
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