研究課題/領域番号 |
22591291
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤瀬 昇 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20305014)
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研究分担者 |
池田 学 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60284395)
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キーワード | 高齢者のうつ病 / 独居 / 社会的サポート / GDS / 南九州 / 自殺予防対策 |
研究概要 |
わが国において自殺者数が年間3万人を超える高止まりの状況が続くなか、そのうち高齢者の占める割合は高く、今後さらに高齢化がすすむことを考えると、高齢者のうつ病対策は喫緊の課題と言える。熊本県球磨郡あさぎり町対象地区の平成23年1月時点で65歳以上の高齢者全員を対象に、前向き長期観察・介入研究を実施し、うつ病およびうつ状態の出現率を明らかにし、うつ病発症の危険因子を分析した。うつ状態の評価には、Geriatric Depression Scale (GDS)を用いた。1505名の対象者のうち有効回答率は65.0%で、二次調査への参加率は29.5%であった。診断面接の結果、何らかの精神疾患と診断された人は17名いて、そのうち、うつ病は7名で、その出現率は0.7%であった。平成21年度の予備的調査では、うつ病の出現率は3.1%であったことから、当該地域での啓発活動や相談事業などが出現率の低減に効果的だったことが考えられた。うつ状態と関連があった因子は、「年齢」「介護」「社会的サポート」「通院」「居住人数」「睡眠の質」「食欲」「金銭的不安」「飲酒習慣」であり、概ね昨年度調査と同様の結果であった。家族形態では、独居の場合が有意にGDS得点が高かった。わが国における自殺対策先進地域である東北地方での先行研究の多くは、高齢者の自殺およびうつ状態は、同居とくに多世代同居の場合に多いと報告されているが、今回われわれの調査では、うつ状態は独居の場合に有意に多く認められた。南九州における地域在住高齢者のうつ病に関する疫学調査はほとんどなく、その実態は不明である。東北地方においてこれまで蓄積されてきたデータとの共通点および相違点を抽出し、うつ病の地域特性(多様性)の実態を明らかにするとともに、南九州独自のうつ病ならびに自殺予防対策を考える上での基礎的データにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成21年から本縦断研究を実施しており、町内を3つの地域に分け、年ごとに対象地区を変えることで町内をくまなく啓発できるように努めている。町の協力も得られ、調査の実施も年ごとにスムーズになっている。これまでの調査データからは興味深い結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
一次調査でうつ状態が疑われた回答者には、出来るだけ全員に面談の機会を持ち、うつ状態の評価を行いたい。町担当部署と話し合い、まずは二次調査の参加しなかった該当者へ電話連絡を入れる予定である。また、二次調査の参加率が徐々に低下しており、参加率を上げる何らかの工夫が必要。次年度は、認知機能の簡便な評価機器を導入し、住民に周知する予定である。
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