本研究の目的は、アルツハイマー病(Alzheimer's disease : AD)、DLB、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia : FTD)など様々な変性性認知症のBPSDの特徴を臨床記録より抽出し、その原因となる病理学的背景を明らかにすることである。特に、各々の変性疾患における原因蛋白に注目し、BPSD発現に関与するメカニズムを、免疫組織学的手法を用いて明らかにすることを目的とした。 平成22年度は、横浜市立大学医学部精神医学教室に保存の剖検脳に加えて、協力施設である東京都精神医学総合研究所、東京都立松沢病院、さわらび会福祉村病院、積愛会横浜舞岡病院の臨床記録から、BPSDを中心とした臨床症状の抽出を順次行った。また、当教室に保存の剖検脳については、既に、臨床症状の抽出と基本的な病理学的な検索が終わっているため、これらの相関についての解析を進めた。さらに、当大学の剖検脳については、TDP-43など、近年新たに認知症の原因蛋白として同定されたものについて、全症例の免疫染色を行い、BPSDとの関連を調べた。 とくに本年は、Nasu-Hakola病の灰白質病変と精神症状の関連についての検討を行い、結果をまとめて論文として発表した。Nasu-Hakola病の病変は白質病変が中心であるが、灰白質にもグリオーシス等の変化を強く認め、これが精神症状の発現に関与している可能性を明らかにした。
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