研究課題/領域番号 |
22591294
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
松永 寿人 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20254394)
|
キーワード | 強迫性障害 / symptom dimension / 分類基準 / チック関連性 / 自閉性スペクトラム |
研究概要 |
平成23年度には、OCD患者の多様性に着目し、各サブタイプの特徴づけと伴に、それぞれに対する合理的治療選択と手順に関する治療アルゴリズムを提言した。この成果は、標準的な治療ガイドラインとして、臨床精神薬理誌14巻6号あるいは、「神経症性障害の治療ガイドライン」精神科治療学26巻10号増刊号において報告した。さらに現在、国際的な薬物療法アルゴリズム作成にも携わっておりその成果は現在国際誌に投稿中である。 この様なOCDのサブタイプ化は、強迫スペクトラム障害に関する我々の研究成果を背景に検討を進めた。特に強迫観念や不安増強に関わる認知的プロセスが介在せず強迫行為が出現するタイプに注目し、motoric OCDとして、その臨床像や精神病理、生物学的異常、あるいは治療における特異性を、典型例(cognitive OCD)との比較の中で明確化し、学会での招待講演などで報告した。特にmotoric typeにおいては、チック障害との関連性が強く、大脳基底核、特に線条体における機能障害が関わっており、SSRI抵抗性で、非定型抗精神病薬によるドーパミン系の調整を要する。この点は、提言した治療アルゴリズムにも示したが、特にこのタイプに対するaripiprazole augmentationの有効性を、英文誌に報告した。一方、強迫スペクトラムに関しては、DSM-5改定動向に伴い、関心が高まっており、これに関するシンポジウムを日本精神神経学会(東京)において行った。今年度は、さらに学会における報告活動を行うと伴に、OCDの難知性の指標としてautism spectmm、あるいは社交不安傾向に着目し、その意義や治療に関しても、研究・報告を行いたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるサブタイプによるOCD治療の適正化と標準化は、その論理的根拠の検討を含め、当初の予定通り勧めていると考える。さらにこの治療手順が国際的にも妥当であることも検証している。 今後はより難治例の特徴づけやその治療法を開発し、さらに報告を加えていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、OCDのサブタイプによる治療の最適化、標準化であるが、symptom dimensionあるいはチック関連性などのサブタイピングの指標に関しては、さらの妥当性・信頼性検証を進めたい。またautism spectrum relatedなど、新たな臨床的指標の意義についても検討したい。一方、本研究の目的には、この結果の公開と、本邦におけるOCD治療レベルの向上にある。この点、さらに学会、講演会、研修会などを通じて、その啓発を進めると伴に、意見を参照しながらさらに修正・改良を加えていきたい。
|