本科学研究費補助金を用いて、強迫性障害の新規分類基準の生物学的妥当性、臨床的有用性に関する検討を三年間にわたって行った。 例えば、強迫性障害患者を症状デメンジョンにより分類し、溜め込みが優勢な患者において、SSRIやCBTなど、OCDの定型的治療に対する抵抗性を確認した。しかしこの一群は、単一的なものではなく、溜め込み症状自体が独立的に存在する群と、汚染物を触れないなど、他の強迫症状に関連する群に分類された。この二群では、様々な精神病理学的相違を認め、双方の独立性が推定されたが、治療予後はいずれも不良であった。この結果はCNS Spectrum誌に掲載された。 さらには、症状デメンジョンの臨床的な有意性を高める為、各患者の最も優勢なデメンジョンを分類基準として類型化し、それが如何なる特性を反映し、治療法や反応性を含め差別化するかを検討した。その結果、約70%の患者では、主要なデメンジョンの特定、類型化が可能であり、汚染群や禁断的思考群では、正確性・儀式行為群、保存群に比して、SSRI、および行動療法に対する反応性は良好であった。一方、正確性・儀式行為群では、SSRIに対しては反応不良を示したが、非定型抗精神病薬による増強療法には良好な反応性を示し、その後はCBTのコンプライアンス、反応性も良好であった。この様な群間差は、各デメンジョン間の精神病理学的、生物学的相違とも相関すると考えられ、臨床に応用しやすい類型分類化に従っても、治療法や反応性、予後予測に有用となる可能性が示唆された。この結果はPsychiatry Research誌に掲載された。 その他、この間に、多くの論文や書籍の中で、最新のOCDに対する治療ガイドラインを提唱し、その標準化や普及に努めた。
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