研究概要 |
本研究は自覚的な睡眠障害や精神症状をもたない不規則勤務者の睡眠をCyclic alternating pattern(CAP)法を用いてミクロ構造レベルまで解析し、勤務形態による睡眠構造の変化を明確化するとともに、日中の気分や眠気、精神作業能力、記憶などとの関連を明らかにすることである。昨年度の結果から不規則勤務者は、非不規則勤務者と比較して、POMSを用いた抑うつ指数が高く、特に女性においては、月経関連症状が高いことが示された。そこで今年度は、女性の性周期による睡眠内容の変化をCAP法による詳細なノンレム睡眠に関する検討を行い、有経女性において性周期が女性の睡眠に与える影響について検討した。月経周期は身体のみならず精神機能に少なからず影響を与えることは既知であるが、過去の報告からは、黄体期後期において睡眠の悪化が報告されている。しかし睡眠ポリグラフを用いて周期による差を明確化したものはない。 対象は平均年齢29.2+/-4.6才の婦人体温表にて規則的な性周期を確認した健常有経女性とした。婦人体温表にて性周期を確認し、黄体期(Lp)と卵胞期(Fp)にあたる日に睡眠検査室にて睡眠ポリグラフ測定(PSG)を行った。その結果、セントメリー病院睡眠質問票において睡眠の質は黄体期の方が悪い傾向を認めた。さらにPSGによる睡眠内容の解析の結果、従来法による解析では明確な周期による差異は認められなかったものの、CAP解析により、CA rateおよびthe Number of CAPは優位にLpの方がFpに比較して高値を示した(mean CAP rate:Lp 38.2+-7.3%,Fp:30.3+/-8.9)。CAPはノンレム睡眠の不安定性を示す指標であり、Fpに比較してLpにおいて高値を示したことは、特にノンレム睡眠の悪化が示唆された。progesteroneの代謝産物であるAllopregnanoloneはGABA作動性にノンレム睡眠の安定化作用を有するが、黄体期におけるprogesterone分泌量の低下がこの現象に関連している可能性が示唆された.
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