研究概要 |
[1. 目的]近年、統合失調症の長期転帰に多大な影響を及ぼす社会機能障害への取り組みは、早期介入に主眼が置かれるようになった。一方、社会機能の改善を目指した治療手法として、認知機能訓練が注目されている。本研究の目的は、統合失調症の長期転帰を決定づける、およそ発症5年以内といわれる治療臨界期における、認知機能訓練の重要性と、有効な訓練内容および手法を明らかにすることである。 [2. 認知機能訓練プログラムの開発]我々の先行研究における知見(Nemoto et al., 2009)を基にして、教育専門家などの協力も得ながら、基本的認知機能の訓練課題に加えて、対人関係など社会的な認知機能に関わる題材も取り入れた、発散的思考を標的とした24週(168日分)にわたる、ワークブック形式の独自の認知機能訓練プログラムを平成22年度に作成した。また、学習やパズル課題に加えて、社会的な知識に関わる題材なども取り入れた、収束的思考を標的とした対照訓練プログラムを同様に作成した。 [3. 対象]東邦大学大森病院精神神経科外来に通院する40歳以下の患者で、統合失調症圏初回エピソードと診断された者を初回エピソード群、発症危険状態と診断された者をARMS(at-risk mental state)群、罹病期間が5年以上の者を慢性期群とした。 [4. プログラムの実施]各群内でランダムに2つの訓練プログラムへ割り付けた、計6群によるRCTを開始した。外来にて進捗状況を確認し訓練を継続している。プログラム開始前(0週)、中間点(12週)、終了時(24週)に、認知機能、精神症状、社会機能などの評価を行う。効果の持続性を検討するため、訓練終了12週後および24週後にも同様の評価を行う。 [5. 結果]平成22年度に計45名がプログラムを開始した。平成23年度も症例数を増やしていく。
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