研究概要 |
【対象と方法】うつ病患者44名(うち20名には睡眠ポリグラフ検査:PSGを施行)に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるフルボキサミン療法を12週間行い、投与前と投与早期(2週、4週)の臨床指標および客観的睡眠指標(PSG指標)が、投与12週後の治療効果を予測できるかどうかを検討した。臨床指標としては、うつ病のサブタイプ(メランコリー型の特徴の有無)および17項目Hamiltonうつ病評価尺度(HAM-D-17)、Beckうつ病調査票(BDI)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。 【結果】全症例(N=44)の寛解率(12週時のHAM-D-17得点が7点以下と定義)は58.2%であったが、メランコリー型の特徴を伴ううつ病では、伴わないうつ病に比べ寛解率が有意に低かった(P<0.01,33.8%vs.75.2%)。また臨床症状の早期の反応率と最終時(12週時)のHAM-D-17改善率は有意な正の相関を示した(各々R=0.64,P<0.0001,R=0.63,P<0.0001)。PSG指標と抗うつ効果との関係では、投与前、4週時のREM潜時変化量と最終時(12週時)のHAM-D-17改善率は強い正の相関を示した(R=0.76,P<0.001)。 【結果】うつ病のフルボキサミン急性期療法において、メランコリー型の特徴を伴ううつ病では、伴わないうつ病に比べ、寛解率が有意に低かった。また、フルボキサミン投与早期(2,4週時)のHAM-D-17改善率が12週時の反応性を予測する有効な臨床指標となる可能性が示唆された。さらに、PSG指標のうちフルボキサミン投与前と投与4週時のREM潜時変化量が、12週時の反応性を予測する強力な客観指標となる可能性が示唆された。
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