統合失調症は重篤な精神疾患であるが、診断において客観的な指標を欠き、疾患としての異種性を内包するなどの諸問題により、原因遺伝子の同定は未だに困難な状況にある。疾患の生物学的指標の活用はこの問題の解決の一助になると考えられる。表現型と遺伝子型との間に位置する中間表現型としてのエンドフェノタイプという概念が提唱されているが、統合失調症のエンドフェノタイプの一つとされるプレパルスインヒビション(prepulse inhibition:PPI)は、驚愕反応を惹起させる強い感覚刺激の直前に、弱い感覚刺激を提示することによって、驚愕反応が抑制される現象であるが、統合失調症患者では、健康対照者と比較してこの抑制が減弱しているという報告が様々な人種を対象とした研究において繰り返しなされている。 本研究では、統合失調症患者、健康対照者を対象として、音刺激を用いて計測したPPIデータについて、喫煙歴、服薬内容などの各種情報と組み合わせ、様々なパラメータを用いた解析を行い、研究参加者からDNA抽出用の試料を採取し、将来実施予定である疾患のゲノム研究におけるリソース拡充のための基盤整備を行った。また、ゲノム研究においてはサンプル数の拡充が必須であるが、その解析対象となるDNAの抽出元の試料として、採取時に危険性の無い唾液サンプルが、血液の代替試料と成り得るか否かについても、異なる抽出方法を用いて検討を行った。
|