研究概要 |
1.モデル構築 現在、効用理論の上で展開されている、認知・情動が意思決定において果たす役割の仮説に関する既存研究について文献を調査し、強化学習理論上で記述しなおすことで検証可能な仮説を整理した。特に、強化学習理論は、効用理論に加えて時間方向の状態変化の系列に対する記述能力が高いことから、時間に関するバイアス(time-discountingなど)と、時間方向に展開できる不確実性・リスクに関するバイアス(probability weight functionなど)に集中した。そのうえで、強化学習理論に基づくことで始めて記述できる仮説を検討し、理論モデルを構築した。 2.既存のデータを用いた妥当性の検討 申請者がすでに機能的MRI研究を行ったIowa gambling task (IGT) original version (fukui et al., Neuroimage 2005)に加え、IGT variant versionの機能的MRのデータ(Kiwata, Fukui et al., in preparation)も用いて、強化学習モデルによる記述を行った。IGTは元来、眼窩前頭前皮質の損傷患者に対する臨床的なタスクとしてこれまで使用されてきたもので、将来の長期的予測を測定するものとして応用されてきた。しかし、これについて今まで強化学習の枠組みで解析されていない。 本研究では、まず1.で構築したモデルをIGTに適応し、その適合性を検討した。 3.予備的行動実験 前項で構築した理論モデルに基づいて、行動実験をデザインし、健常被験者40名程度を対象に実施した。行動実験に施行可能な課題とするため、課題はコンピュータでプログラムし、モニター上に提示可能で、反応や反応時間が記録可能なものを作成した。
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