これまでの2年間の研究により、正常データベースの構築を行い、心機能の標準値を決定してきた。また、今年度までに、心筋SPECTにおける正常データベースについても、核種と放射性医薬品毎に希望する研究者や病院に提供できるような環境も整備できた。 今年度はさらに、交感神経イメージングについて、心縦隔比の指標の標準化のために、施設間での較正方法を確立した。また、その計算のためのアルゴリズムの確定、ソフトウェアの作成を行った。さらに、この研究を多施設研究に応用して、交感神経(メタヨードベンジルグアニジン、MIBG)イメージングの異常を示す典型的適用である、アルツハイマー病とレヴィー小体型認知症の各群に適用し、その新しい較正方法の妥当性を証明できた。この方法は、心不全におけるMIBG多施設研究にも応用でき、今後の発展研究の基盤とすることができた。 全国での心臓の予後評価多施設研究であるJ-ACCESS研究のデータベースを利用して、多変量解析を行い、負荷時の心筋虚血量、左心室駆出分画、年齢、糖尿病、推定糸球体濾過値の多変量により重症イベント発症を予測できるモデルを作成した。その結果をリスクチャートとして公開した。また、リスク評価を心筋欠損解析ソフトと統合することの有用性も報告した。この研究により、その病態から将来の潜在的なイベント発症確率を計算し、高リスク群と低リスク群を識別できるようになった。この方法は、多種類の心イメージング法がありその適応が複雑化する中で、適切な診断の方針を決定する重要な情報を提供するものとなった。
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