本研究の目的はマルチスライスCTを用いて冠動脈プラークのボリューム・正常と心筋血流および血流予備能を同時に診断する新しい検査法を開発することである。平成22年度はまず、負荷時・安静時の心筋パーフュージョンMRIやX線冠動脈造影との比較を通して、負荷時・安静時の造影CTからなる心臓CTの撮影プロトコールの最適化に取り組み、心筋虚血を明瞭に描出できる検査プロトコールを確立し、確立した検査プロトコールによる負荷・安静の心臓CT検査を虚血性心疾患患者28名を対象に行った。患者データの蓄積は平成23年度も継続して行う予定であるが、ここまでのデータからは、1)我々が採用した検査プロトコールにより、心筋虚血と冠動脈狭窄の同時評価が可能であり、その結果はX線冠動脈造影や心筋パーフュージョンMRIとよく一致すること、および2)負荷時の撮影で心筋虚血の有無に加えて冠動脈狭窄の有無を評価でき、安静時の造影CTを省略できる場合があることが明らかとなった。1点目については、本研究の目的を果たす上で非常に重要な前進である。2点目に関しても、造影剤使用量や放射線被ばくの低減の観点から意義深い発見といえる。また、冠動脈狭窄やプラークボリュームの評価における心臓CT検査装置の精度を明らかにするため、冠動脈狭窄ファントムを作成した。次年度はさらなるデータの蓄積を行い、心筋血流の定量的評価法の開発に取り組む予定である。
|