研究概要 |
平成22年度は、57歳男性の正常ボランティアにおけるCT画像データを用いて、局所肺機能解析法の確立を目指して検討を行った。まず、上肺野および下肺野に分けて、急速呼気時に0.35秒ごとの連続スキャンを行ったが、吸気位および呼気位以外の中間位での画像は動きによるアーチファクトのために正確な肺葉容積およびCT値の計測が難しく、1秒量や1秒率を算出することが困難であることが明らかになった。また、16cmのスキャン範囲では、肺葉全体がカバーできないことも判明した。そこで、ダイナミックCTによる手法を断念し、160列ヘリカルスキャン法によって、吸気と呼気の2相の全肺CT画像を撮像し、その変化から局所肺機能を評価する手法に変更した。当初予定していたVIDAシステムでは、肺葉に分葉不全が存在する場合に測定不能となったために、データを別の市販解析ソフトで計測した。深吸気での全肺容量は6004ml(右上葉1145ml.右中葉603ml,右下葉1507ml,左上葉1425ml,左下葉1324ml)で、深呼気では、全肺容量は2613ml(右上葉513ml.右中葉375ml,右下葉558ml,左上葉677ml,左下葉490ml)となった。容量減少量の吸気肺容量に対する比率は、全肺56.5%(右上葉55.2%.右中葉37.8%,右下葉63.0%,左上葉53.2%,左下葉63.0%)で、肺葉ごとに不均一があることが明らかになった。しかし単位容量減少に対する肺野CT値の変化は、全肺3.06HU(右上葉2.79HU.右中葉2.67HU,右下葉3.38HU,左上葉3.19HU,左下葉3.62HU)と比較的一定の値となった。平成23年度は、正常ボランティアでのデータをもとに正常肺のCT指標のばらつきを検討し、さらに、区域レベルでの解析を行う予定である。
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