研究概要 |
平成23年度は、前年度に確立した320列面検出器型MDCTのヘリカルスキャン法による全肺吸呼気CTを用いた局所肺機能評価法の検証を行った。対象は正常ボランティア26例、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のGOLD1型9例、GOLD2型あるいは3型12例の計47例である。得られた全肺吸呼気CTデータをワークステーションに転送し、市販の解析ソフト(GE社製)を用いて、全肺および肺葉ごとに新しく考案した吸収値容量指数(attenuation volume index, AVI)を計算し、同時に従来用いられてきたエアトラッピングの指標であるピクセル指数(PI)やエアトラッピング率(ATR)も同時に算出し、比較検討した。また全肺におけるこれらの指標と呼吸機能検査における1秒率や1秒量との相関を検討した。1秒率との相関では、AVI,PI,およびATRのいずれの指標も良好な相関を示した(相関係数0.76,-0.85,および-0.72)。しかし、正常群、GOLD1群、GOLD2/3群で平均値と標準偏差から変動係数(variation coefficient, VC)を求めたところ、各群においてPIはAVIよりVCが大きかった。また、肺葉ごとの指標を求めたところ、6葉中4葉でATRは正常群とGOLD1群の間での有意差はなく、また肺葉に関して一定の傾向もみられず、軽度のCOPD変化の検出に問題がある可能性が示された。これに対して、AVIでは正常人においても上葉と下葉の間に指標の有意差がみられ、生理的な局所肺機能の違いも定量的に評価できる可能性が示された。したがって、AVIは被検者の呼吸努力によらずに局所のエアトラッピングを定量的に評価できる有用な指標と考えられた。今後は、この局所肺機能指標を用いて、各肺葉ごとにAVIと中枢気管支の外径や壁肥厚との関係を検討する予定である。
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