研究概要 |
PET検査が依頼された乳癌患者に対し、全身用PET/CT装置による全身撮像を行った後に、2種類の乳房専用PET装置を用いて片側5分で乳房の撮像を行い、手術結果などの最終診断に基づいて診断精度を検討した。乳房専用PET装置(O型およびC型)、全身用PET/CT装置、乳腺MRI検査をすべて受けた69人(31-77歳、平均54歳)、80病変に絞って解析した。術後の最終診断として悪性76病変の内訳は、浸潤性乳管癌67病変、浸潤性小葉癌5病変、非浸潤性乳管癌4病変であり、境界型と考えられるadenomatous ductal hyperplasiaは1病変、良性3病変(線維腺腫1病変、線維嚢胞変性2病変)であった。乳房専用PET装置O型およびC型、全身用PET/CT、乳腺MRIの感度は、患者別解析でそれぞれ82%(55/67),85%(57/67),96%(64/67),100%(67/67)であり、病変別解析(ただし複数病変の場合は2個までとした)で、それぞれ82%(62/76),83%(63/76),92%(70/76),100%(76/76)、乳房専用PET装置の感度は全身用PET/CTよりもむしろ低かった。ただしこれはPET装置の撮像範囲外に病変が存在した症例を含んでおり、そのような症例を除くと病変別解析の感度はO型、C型それぞれ93%(62/67)、90%(63/70)であった。全身用PET/CTと比較してO型は高い感度を有したが、C型はほぼ同等であった。これは今回対照とした母集団が、乳癌が疑われて精査あるいは治療を目的に外来を受診し、PET/CT検査の依頼があった患者であり、もともと原発巣のサイズが大きく(平均27mm)、通常のPET/CTでも十分描出できる症例が多かったためではないかと推察される。がん検診として前向きに症例を蓄積した場合には、分解能と感度の高い乳房専用PET装置の優位性が示される可能性がある。また日本人は乳房の小さな人が多く、胸壁に近い場所に存在した小病変は撮像範囲外となることが多かった。高密度乳房で大きな体格を有する欧米人を対象とした場合には、通常のマンモグラフィでわからない小病変の検出に役立つかもしれない。なお、今回対照とした集団では乳房別解析によるO型およびC型の特異度は、98%(48/49),98%(56/57)であり、偽陽性は少なかった。
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