本研究の目的は、分解能の向上した最近のpositron emission tomography(PET)装置でしばしば観察される、腫瘍内部における放射性薬剤の集積の不均一性に着目し、その生物学的要因を明らかにすることである。 F-18 FDG PET画像における腫瘍内集積不均一の定量的評価法は、初年度平成22年度に考案し、以後用いている。平成23年度には、この方法がいずれも腹部の大きな腫瘤として発見される悪性リンパ腫と消化管間質腫瘍の鑑別に有用であることを報告した。子宮頸癌および体癌における評価では、F-18 FDG集積の程度や病変サイズが同等であっても、体癌の腫瘍内集積不均一の程度は頸癌よりも大きいことを示した。 平成24年度には、食道癌および肺癌において化学療法前・後に得られた腫瘍内集積不均一のデータを解析し、standardized uptake value (SUV)などとの比較を行った。食道癌では、腫瘍内集積不均一は治療に伴い均一化傾向を示し、その変化はSUVの変化と関連を有した。肺癌では、腫瘍内集積不均一は治療前の時点でSUVとは関連がなく、metabolic tumor volume (MTV)と関連のあること、また、不均一性は治療に伴って変化するものの、治療効果良好群と不良群との間に有意差のないことが明らかとなった。いずれの癌においても、治療前集積不均一の程度が大きいほど治療効果が不良であることも判明した(これらの成果は、米国核医学会総会および日本核医学会総会において発表した)。 腫瘍内不均一は癌種間で違いが大きく、また個体差も大きく、当初予想していた腫瘍内血流分布などに関連要因を絞り込むことは困難であった。一方で、腫瘍内集積不均一の定量的測定法の確立や治療効果予測における可能性を示すことなど、今後の研究に発展可能な成果をあげることはできた。
|