研究概要 |
研究の最終目標は高磁場MRI内での磁性流体による発熱が腫瘍治療に必要十分であるかを検討するものである。そのため平成22年度には発熱実験に使用するファントムの作成と、RFパルスを連続印加するためのシーケンスの確定を行った。 1)ファントム:MRIによる発熱実験に用いられるASTM(American Society for Testing and Materials)規格が2010年に新基準が報告された。容器はゲルファントム容器(65×42×9cm)を用いた。ポリアクリル酸ゲル(25L)は蒸留水,ポリアクリル酸146.25gと塩化ナトリウム(NaCl)20.0gから作成した。 2)MRI:装置はPhillips社製、Achieva 1.5Tを使用した。撮像条件は以下のように決定した。 室内温度:25℃±1 撮像時間:20分 SAR/whole body:4.0W/kg RFコイル:全身コイル{Q-body} 積算回数:1 スライス数:15 シーケンス:SE(TR 130ms, TE6.0ms) スライス厚:20mm Dyn scan:50 3)発熱計測点:上記容器にポリアクリル酸ゲルを入れて、点滴用延長チューブを5cmに切断し、内部に100%濃度のナノ磁性流体(リゾビスト)を注入したものをゲルファントム表面からの深さを1,2,3cmと変化させてゲル内に固定して.蛍光ファイバー式温度測定器(Luxton社製)と同期させてところ、深さを変化させると1cmの場合にもっとも顕著に温度上昇が起こった。 本年度の研究によりMRI内でRFパルスを印加することによるナノ磁性流体の発熱計測系が確立された。これによりナノ磁性流体を発熱できるかが検証され、次年度以降に行う予定である腫瘍治療に応用できる温度上昇があるかどうかの検討の基礎データが得られたものと考える。
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