研究概要 |
大腿骨近位部ジオメトリー評価として、これまで頸部骨折および転子部骨折症例における形態的特徴を報告してきた。その研究は各骨折群において、年齢を一致させた症例とのcase-control studyであるが、頸部骨折の特徴として、頸部長が長い、断面二次モーメントが低値、坐屈比が高いことであり、転子部骨折では皮質骨面積が小さいことが特徴と考えられた。今年度は、これらのパラメターを主眼にして、健常閉経後女性59名(54-84歳)における2年間の経年変化をまとめた。その結果、年間変化率は頸部において全骨密度(-0.900±0.257,p<0.0005),皮質骨面積(-0.800±0.423,p<0.05)、皮質骨幅(-1.120±0.453,p<0.01)の有意の減少を認め、骨強度指標として断面二次モーメント(CSMI)と強度指標section modulus (SM) (-1.38±3.65p<0.01 and -1.37±2.96%/year,p<0.005)は有意に減少し、坐屈比buckling ratio (BR)は有意に増加した(1.48±4.81,p<0.05)。以上より、現行の臨床用CTを用いた解析システムで経時的変化が検出できることが示された。また活性型ビタミンD3誘導体(ED-71)にて治療(144週)した症例におけるジオメトリーと骨強度指標の変化を検討した。その結果、193人の骨粗鬆症患者(52-85歳、平均70.9±6.92)において、ED-71は皮質骨内膜側の骨吸収をアルファカルシドール以上に抑制して、皮質骨面積、皮質骨密度、皮質骨幅を維持して、骨強度指標を増大させる薬剤であることが明らかとなった。現在、日本人と欧米人のジオメトリーの差違、DXAに基づくhip structure analysisとCT-based hip structure analysisの相関、差違を検討している。また薬物療法として副甲状腺ホルモン投与症例による大腿骨ジオメトリーの変化について結果をまとめている。
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