研究課題/領域番号 |
22591346
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
松本 俊郎 大分大学, 医学部, 准教授 (80219500)
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研究分担者 |
清永 麻紀 大分大学, 医学部, その他(医員) (90464445)
山田 康成 大分大学, 医学部, 講師 (60244183)
森 宣 大分大学, 医学部, 教授 (20128226)
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キーワード | 画像診断学(含放射線診断学) / MDCT / 肝臓癌 / 膵臓癌 / 胆管癌 |
研究概要 |
平成23年度は、平成22年度の研究継続と、多検出器CTと病理所見との対比で得られた新たなる知見を検証する目的で、"periportal cancer spread pattern"とは異なる膵体尾部癌、肝外胆管癌の進展様式に関して研究の裾野を拡げた。その結果、膵体尾部癌では門脈周囲域への進展形式とは別に、膵周囲脂肪織に氷柱状の線維化を伴いながら浸潤する形式が病理学的に判明し、同CT所見をり"peripancreatic strands appearance"と命名した。切除された膵体尾部癌17例中、13例(76%)で同CT所見は認められ、成因として膵星細胞の役割(線維化)ならびに血管新生、リンパ管新生の関与が示唆された。同研究成果を腹部画像診断関係の英文雑誌(Matsumoto S, et al.Abdominal imaging 2011 Sep 13.【Epub ahead of print】)に発表した。 一方、肝外胆管癌では、"periportal cancer spread pattern"に進展形式は類似するものの、原発巣の門脈周囲域から右腹腔神経節に向かう二つの神経叢(posterior hepatic plexus【PHL】1,2)を介する癌浸潤が判明し、多検出器CTと病理所見との対比を遡及的に行った。その結果、肝外胆管癌43例中、10例(23%)でPHL1、9例(23%)でPHL2への癌浸潤が病理学的に確認された。多検出器CTでは同神経叢に一致する索状、網状、腫瘤状の濃度上昇域として捉えられ、特に冠状断再構成像で高い正診率(95%)が得られた。同研究成果は放射線医学関連の最高峰である英文雑誌Radiologyに投稿し、acceptされた(Yamada Y, et al.Radiology 2012 May 263 ; 419-28【Epub ahead of print】)。 過去2年の研究期間で、対象となる肝臓癌、胆管癌、膵臓癌の"periportal cancer spread pattern"の典型的な病理学的所見が得られた症例数は少ないが(多くが進行癌で手術非適応例であるため)、今後予後検索を行い、同CT所見の臨床的意義を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肝臓癌、胆管癌、膵臓癌において、多検出器CT上、明らかな"periportal cancer spread pattern"を呈する症例は手術適応となることが極めて少なく、病理学的所見との対比が思った以上に進まなかったのが最大の要因である。しかしながら、先の"研究実績の概要"で述べたように、胆管癌、膵臓癌の手術症例の病理所見を評価していた際に、新たなる知見が得られ、関連研究として成果を発表(2論文)できた点は満足している。
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今後の研究の推進方策 |
多検出器CT上、"periportal cancer spread pattern"を呈する肝臓癌、胆管癌、膵臓癌での手術例数が少ないため、今後は画像的変化(進行状況)と予後との関連を中心に、同CT所見の臨床的意義を追及して行く予定である。勿論、その間手術症例があれば過去2年間の研究と同様、病理学的対比を継続する。
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