研究概要 |
心筋梗塞患者において、梗塞慢性期における非梗塞(梗塞対側)部の左室拡大と壁肥厚(リモデリング)が心不全(左室駆出率が低下した収縮期心不全)の原因として注目されている。そこで心筋梗塞患者における非梗塞部の機能変化に着目し、同領域の心筋血流および交感神経 pre-synapse 機能を検討した。16 名の陳旧性心筋梗塞において11C-hydroxyephedrine (HED) の心筋滞留率を交感神経 pre-synapse 機能の指標としたが、pre-synapse におけるカテコラミン取り込みは局所心筋血流に依存するため、同日 13Nammonia を用いた局所心筋血流(MBF)の定量を施行し、心筋血流量での補正を試みた。左室容積は、同じく同日施行した心エコー図検査において求めた。同様のプロトコールを健常成人ボランティア 10 名においても施行した。結果:左室リモデリングの指標である左室拡張末期容積係数は陳旧性心筋梗塞群で健常群よりも有意に大きく(69.6±15.9 vs 47.2±13.4 ml/m2, p<0.01)、心筋梗塞群では明らかな左室リモデリングが認められた。健常群において 11C-HED 心筋滞留率と局所心筋血流は、いずれも左室前壁で最高値であった。梗塞群の非梗塞部において、局所心筋血流は健常群の前壁血流よりも有意に少なかった (0.76±0.14 vs 0.88±0.13 ml/g/min, p<0.05)。 一方 11C-HED 心筋滞留率は、 梗塞群非梗塞部において健常群の前壁と比べても有意に高値であり(8.06±1.22 vs 7.03± 1.12 %/min, p<0.01)、その心筋血流補正値も同様に有意に高値であった(10.8±1.7 vs 8.1± 0.9 %/min/MBF, p<0.001)。結論 :陳旧性心筋梗塞患者の非梗塞部において交感神経 pre-synapse 機能の亢進が観察された。この亢進が、陳旧性心筋梗塞患者における収縮期心不全の発症と何らかの関係を有する可能性が想起される。
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