研究概要 |
前年度までに収集した、片側の内頸動脈あるいは中大脳動脈に狭窄性病変を有する患者40名(男28、女12 平均63歳)の虚血脳における神経磁気徐波活動の分布および強度を、われわれが独自に開発した空間フィルタ法の一種であるsLORETA-qm (standardized low resolution brain electromagnetic tomography for a quantifiable method)に主要脳動脈関心領域(ROI)を設定することにより定量的に評価した。 2-6Hz帯域の徐波を定量画像化し、得られたMEG定量画像をSPM (statistical parametric mapping)を用いて標準脳座標系に変換した。さらに自動ROI設定法にて主要脳動脈支配域(前大脳動脈ACA, 中大脳動脈前部MCAa, 中大脳動脈後部MCAp, 後大脳動脈PCA)に関心領域を設定した。PET画像も同様の方法でROIを設定した。MEG画像とPET画像の各ROIにおける定量値および分布についてLI(laterality index)を用いた統計解析を行った。 得られた結果は、中大脳動脈前部と中大脳動脈後部の徐波強度(MEGMCAa, MEGMCAp)は統計学的に有意な左右差を示し(p<0.05)、MEGMCApが中大脳動脈前部と中大脳動脈後部の脳血流量(CBFMCAa, CBFMCAp)と強い相関を示した(r=0.75, 0.70)。一方で、MEGMCAaはCBFと強い相関は認められなかった。徐波活動とOEFとの間には有意な相関は認められなかった。虚血脳における神経磁気徐波活動が局所脳血流と必ずしも強い相関を示さないことは、脳神経活動が血管支配域によらない独自の分布(neural network)を有していることを示唆すると考えられた。
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