PET製剤にとって最も重要なことは、目的とする有効性と安全性が発揮されるように、高い品質が保証されていることである。PET製剤の品質はターゲット物質などの出発原料または製造・精製過程に由来する不純物によって直接影響を受ける。そのため、得られた製剤の品質を分析するだけではなく、各製造工程においてサンプリングを実施し、含有する不純物の種類、量を把握しつつ高品質な薬剤を得るための最適な製造条件を設定することが重要になってくる。 本研究では、製造工程管理に基づくモデル薬剤として、臨床的有用性の高い数種のPET薬剤、18F-FRP-170、18F-AV-45、11C-コリン、11C-メチオニンを対象に不純物(放射性不純物、元素不純物)を最小限に制御する製剤化の最適条件をゲルマニウム半導体検出器により検討した。ガスをターゲット物質する11C-標識薬剤の製造において、いずれの工程においても11C以外の放射性核種は検出されなかった。一方、酸素18濃縮水をターゲットとして製造され、複数の精製工程からなる18F-標識薬剤の場合、照射ターゲット水中には18Fイオンの他、ビーム入射窓のチタンから生成した48V(2~3 kBq/mL)が多量に存在し、その他51Cr(50~70 Bq/mL)も検出された。これらは陰イオン錯体として18Fの分離操作の過程で除去されず、18F-標識薬剤の製造工程に持ち込まれる。しかし、標識反応、その後の固相抽出を用いた租精製によってほとんどの異核種は除去され、HPLCによる分離・精製でほぼ完全に18Fのみの単一核種になった。さらに固相抽出法による製剤化により得られた注射剤は放射性不純物、元素不純物を含まない高度な品質を保持してることを確認した。
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