研究概要 |
本研究の目的は, 臨床用MRIを用いた細胞密度を可視化する分子画像によるがん化学療法の早期治療効果判定である。本年度は3テスラMRIにおいて, 細胞密度を可視化する分子画像として, Equivalent cross-relaxation rate (ECR) imagingを開発し, 臨床応用することを主目的とした。 【具体的内容】分子画像システムとして, 磁化移動効果を応用した交差緩和率イメージングであるECR imagingを用いた。転移性肝癌におけるがん化学療法において, 化学療法開始前, 化学療法開始から2週後, 4週後, 8週後, 16週後に化学療法に伴う治療効果と腫瘍のECR値の変化を評価した。化学療法により, 腫瘍の縮小が見られた症例では, ECR値が低下した。ECR値の低下は腫瘍の細胞密度の低下, 線維化, 壊死等を反映したと推察された。ECR値を用いることにより, 本手法は腫瘍の形態的な変化のみならず, 構造的な変化から化学療法の治療効果判定が可能であることを示唆した。 【意義】臨床における, 化学療法の治療効果判定は腫瘍サイズの変化により評価されている。がん化学療法の治療効果判定に分子画像システムを応用することにより, 腫瘍の形態的な変化のみならず, 分子・組織の構造的な変化に基づいた化学療法の治療効果判定が可能である。すなわち, 本研究はがん化学療法の早期治療効果判定に大きく寄与すると考えられる。 【重要性】本研究は, 組織レベルの評価から細胞レベルの評価へ, さらには分子レベルの評価を実現する臨床画像として発展することが期待できる。また, 細胞密度を可視化する分子画像システムを開発し, 臨床応用することにより, がん化学療法における早期治療効果判定を実現することは, テーラーメイド治療を推進し得ると考えられる。
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