研究概要 |
本研究は,脳内アミロイド蛋白集積のBF-227 PETアミロイドイメージグによる正確な評価方法を確立することを目標としている.BF-227は,よりmatureなアミロイドプラークに結合するなど,世界標準となっているPiBと比較して,ユニークな特徴を持つ.しかし,集積/非集積のコントラストが小さく,白質との集積比が小さいという欠点を持つ.PET画像は空間分解能が低いため,皮質に白質の信号が混入する影響(spill over effect)を受けやすい.また,アミロイドイメージングでは,特異的結合の少ない小脳皮質(参照領域)の値との比であるSUVR(standardized uptake value ratio)値が共通して使用されるが.皮質だけの参照領域値を得ることが困難なために,エラーが生じやすい. (1)新しく考案した客観的かつ再現性のある方法で,小脳における参照領域値を得る方法に関して,複数施設のBF-227 PETアミロイドイメージングの臨床データを使って,その有効性の評価をさらに進めた。同方法による参照領域値から得たSUVR値は,健常群とアルツハイマー病群における集積度の分布をより明瞭に分離することができた.PiBにも応用可能と考えられた. (2)志田原の方法(ウェーブレット法)による空間分解能改善の方法をBF-227画像に応用した.従来,FDG脳糖代謝PET画像やラクロプライドドパピン受容体PET画像と同様の条件で適用したが,良好な結果が得られなかった.そこで,パラメータを最適化するために検討を進めた結果,白質・灰白質境界において,エッジのたった画像が得られた.この効果により,白質から灰白質へのspill over effectが減じ,より正確な集積評価が可能になることが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
参照領域法を小脳に設定する新しい方法の評価,アミロイドイメージング用の解剖学的標準化用テンプレート画像の作成とそれを用いた場合の標準化の精度評価などは,順調に研究は進行している. しかし,ウェーブレット法による空間分解能の改善に関しては,パラメータの最適化にやや手間取った.また,FDGやラクロプライドの画像と比較して,BF-227のPET画像は,白質・灰白質の集積度コントラストが乏しいため,その画像改善の効果を評価することが簡単ではないことが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,前年度までに進めてきたウェーブレット法を適用することにより,アミロイドイメージングPET画像に関して,分解能が改善し,定量値がより正確になることを,臨床画像とデジタルファントームの二つの方面のデータから,検討を進める予定である.
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