研究概要 |
ヒトゲノムの検索によればチャンネル・トランスポーター遺伝子は、数百あるといわれ、神経疾患やがんをはじめとする種々の疾患との関連性が指摘されているものも多い。近年、チャンネル・トランスポーターのポリクリロナル抗体やモノクロナル抗体が多く開発されてきており、診断・治療に応用できる放射性標識抗体の開発が期待される。我々は、血液脳関門や胎盤関門に関与する種々の細胞や、多くの腫瘍細胞に発現するとされるアミノ酸トランスポーターのモノクロナル抗体をインビボ画像診断薬に用いる標識抗体として利用することを最終目的として、放射性標識抗体を基礎的に開発することを計画した。 本年度は、まず、リアルタイムPCRによるmRNAレベルの絶対測定で4F2hc,LAT1,ATA1,ATA2,ASCT2が高発現していたヒト大腸がん株化細胞DLD-1およびヒト膵臓腺癌由来細胞AsPC-1において、蛋白レベルの発現を確認することを目的とし、一次抗体としてanti-LAT1抗体,anti-4F2hc抗体などによるウエスタンブロット法の確立を行った。その結果、DLD-1およびAsPC-1とも蛋白レベルの発現を培養細胞として確認した。更に、放射性標識抗体の評価実験系として、これらDLD-1やAsPC-1を移植した担癌マウスでの蛋白レベルの発現を確認し、腫瘍組織への集積性を評価することとした。 今後、より良い性質の標識モノクロナルLAT1抗体を利用した安定な実験系をインビボで確立すること、再現性の確認を行うこと、多種類のがん細胞で同様の実験を行い細胞による違いを調べることなどを通してタンパク発現と機能発現の関係等の検討をすることが期待される。機能発現については、アミノ酸輸送系Lに対して高い選択性がある^<125>I-4-iodo-meta-tyrosineを用いて検討する予定である。
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