平成22年度は、正常肺組織に対する硼素中性子捕捉療法の影響を検討した。 正常肺に対する放射線照射で最も問題となるのは晩発性(照射6カ月後以上に出現)有害事象である肺の線維化である。今回は、照射後の呼吸数、血中酸素飽和度を測定し、6-7カ月後にマウスを犠牲死させ、肺の線維化の程度を検討した。 硼素化合物は、ボロノフェニルアラニン(BPA)を用いて、非担がんマウスに投与後、照射時間を数段階にふりわけて、京都大学原子炉実験所研究炉にて中性子線を胸部に限局して照射した。 6Gy-eqから15Gy-eqまで、数段階に中性子線量を振り分けて、最長7カ月飼育し、体重、呼吸数、酸素飽和度を確認した。呼吸数、酸素飽和度に関しては各群で予想された差異は認められなかったが、14Gy-eq以上では、ほぼ全マウスが、中性子照射後数日以内に死亡し、急性期毒性により死亡することが明らかになった。11Gy-eqから14Gy-eqの間は、照射1週以内に死亡するマウスが約半数に認められた。11Gy-eq未満では急性期(1カ月以内)に死亡するマウスは観察されなかった。線維化の程度は、本年4月に犠牲死させ、照射7カ月後の時点でマウス肺線維化の程度を検討する予定である。 平成23年度は多発肺転移モデルマウスを使用して治療実験を実施するが、平成22年度の実験結果をもとに、至適配線量を10-11 Gy-eqとして、急性期死亡するマウスが出現しない線量で実験を行っていく予定である。
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