ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、以下BNCT)は、がん細胞選択重粒子線治療という特長を持ち、放射線耐容線量が低い肺に多発する肺転移腫瘍への適応が可能と考えられ、多発肺転移腫瘍に対するBNCTの適応拡大に関する基礎研究を実施した。 本年度は、肺転移腫瘍モデルを用いてBNCTの照射実験を実施した。肺転移モデルの作成が本研究室では安定して作成できなかったため、他研究室との共同研究として実施した。現在結果解析中である。中性子照射実験においては、昨年度までに実施した正常肺組織へのBNCT耐容線量の研究成果を参考にして実施した。 臨床症例において、BNCTの正常肺組織が照射野に含まれる症例を検討した。検討した症例においては1例のみ、BNCT照射7ヶ月後に放射線肺炎と考えられるスリガラス陰影を認めた。臨床症状は軽微でGrade1の有害事象であった。その他の症例では、正常肺組織に対する有害事象は経験しなかった。解析症例数が少ないため、BNCTによる線量と正常肺組織に関する有害事象の相関関係に関して、今後悪性胸膜中皮腫の臨床試験(現在解析中)の症例の解析も併せて症例数を積み重ねて解析していく予定である。
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