悪性神経膠腫等の脳腫瘍に対する放射線治療では大きな腫瘍で発見されることが多く、その微小浸潤の範囲も広いことから、照射野を小さくすることは不可能であり、そのため正常脳組織に対しても高線量が照射され、治療後の起こる高次脳機能障害が臨床上克服すべき大きな課題として残されており、現在有効な治療方法は開発されていない。本研究課題はアルツハイマー病の治療薬として開発された塩酸ドネペジルの放射線治療後の高次脳機能障害に対する有効性を検証する臨床研究を主体とし、その科学的根拠を確認する目的で、動物モデルでも塩酸ドネペジルの放射線照射後の高次脳機障害の改善効果を検証し、分子的な作用機序を明らかにすることを目的とするが、臨床試験を現在実施ちゅうである。試験はUMINなどでOpenにしており、現在2例が登録されている、一例では塩酸ドネペジルが高次脳機障害の改善効果を示している。また、その効果を多側面から検証する目的で悪性神経膠腫の再発様式を調べ再発の形式が長期生存に寄与し、さらに高次脳機障害の誘因となるか否かを臨床的成績を基に検討中である。放射線治療の増感を誘導する併用療法、放射線抵抗性を示す分子に関しても基礎的研究も併せて探索を行い、脳機能に関しては塩酸ドネペジルが有効か否かを検討中である。動物実験モデルを考案中であるが、より臨床に近いモデルには正確な脳への放射線照射が不可欠であり、照射方法、固定方法に関して検討中である。動物行動試験に関しては予備実験を実施しており、その検証を実施している。
|