研究課題/領域番号 |
22591400
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
海野 直樹 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (20291958)
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研究分担者 |
山本 尚人 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (80402262)
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キーワード | リンパ / ICG / 機能検査 / リンパ浮腫 / 診断 / 四肢 |
研究概要 |
【背景】リンパ管は、外敵に対する防御、免疫、老廃物の排出、静脈への水分、タンパク質の還流を司っており、管内を流れるリンパは、リンパ管の自律収縮能(ポンプ機能)により駆出されることにより還流し、四肢末梢から体幹へと流入する。【方法】このリンパ管におけるリンパの運搬能、すなわちリンパの収縮によって生じるリンパ圧の測定方の開発し、応用した。【方法】被測定者に座位で下腿にマンシェットを巻き、赤外線カメラにて足背部に注射した蛍光色素が移動する様を観察する。通常、リンパ管内に取り込まれた蛍光色素は、リンパ管の自動収縮能によって、体幹に向かって運搬され、足背部から鼠径部まで正常人では約10-15分で鼠径部まで到達する。リンパ圧の測定は、0.3mlのインドシアニングリーン(ICG : 0.5%)を足背部に皮下注し、近赤外線カメラPDE(浜松ホトニクス社製)にて、蛍光リンパ管造影を施行。あらかじめ透明な素材で作製したマンシェット(加圧カフ)を膝下に巻き、70mmHgに加圧することによりリンパのカフ中枢側への移動を停止させた。PDEで蛍光像を観察しながら、5mmHgずつカフ圧を減圧していき、リンパ圧がカフ圧を上回り、リンパの移動が再開され、マンシェット上縁を越えた時点のカフ圧をリンパ圧として測定した。健常ボランティア399人の下肢798肢を対象にリンパ圧を測定した。【結果】特に有害な副作用を生じることなく、リンパ圧を測定できた。図に示すごとく、リンパ圧は加齢と共に低下していき、70歳以上の高齢者では20歳代のリンパ圧の50~60%程度に低下していることが判明した。 【結語】ICGリンパ管造影を応用したリンパ圧測定の結果、加齢とリンパ圧の関連が判明した。本法は臨床で応用可能な、新たなリンパ機能検査法になりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四肢のリンパ機能の指標として、リンパ管の収縮能、すなわちリンパ圧に注目し、その測定方法を開発、特許出願(国内、PCT出願)を行った。多数の健常ボランティアで測定を行い、特に副作用や、問題なく測定を行うことができた。本法はこれまでに類のない全く新しい検査、測定方法であるため、更なるデータの蓄積と臨床的な意義の確立が求められるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ圧測定の臨床的意義についての更なる調査、健康と疾患を抱えるヒトでの値の相違について検討する。また今回開発したリンパ圧測定方法は測定に熟練と時間を要するため、より簡便かつ正確な測定が可能となるように自動リンパ圧計の製作が必要と考える。リンパ圧測定以外にリンパ機能を測定する手段として、リンパの流速測定も有意義と考える。今後はリンパ流速度測定法の開発にも着手する。
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