研究概要 |
移植医療における免疫抑制療法は、主にTリンパ球による細胞性免疫をターゲットに発展してきたが、液性免疫による抗体関連型拒絶反応のメカニズムは未だ明らかではない。今回我々はヒト抗HLA抗体による補体成分の活性化をフローサイトメトリーを用い直接計測し、既存抗体によるBリンパ球反応のメカニズムを明らかにする。また日本では生体間移植が主に行われており、多少リスクが高くても移植不可避の症例が多く存在する。私は抗体関連型拒絶反応のメカニズムを解明し、これにより超急性拒絶反応発症のリスクを回避し、さらにHLA抗体陽性患者でも捕体活性化が低い場合移植可能となる可能性を追求する。 実験として、ラット肝移植モデルを作成し、動物実験での実験系の確立を目指した。またマウス犠死後2時間以内の血清を凍結し、捕体成分として保存した。リンパ球は脾臓より分離し保存した。 フローサイトメトリーを用いCD52に対するモノクローナル抗体であるCampath 1Hにて活性化したリンパ球の活性化ガンマグロブリン値を計測した。抗体はIgG, IgG1, IgG2, IgG3, IgG4抗体およびIgM抗体を用いた。また捕体成分を測定するためにフローサイトメトリーの基礎設定を行った。同種異型の血清にて感作されたリンパ球に対し、捕体成分の含まれた同種同系血清(20ul)を付加し、活性化されたリンパ球における捕体系の活性を計測した。C1q, C3c抗体およびiC3b, C3d, C4d, C5, C5b-9抗体を用い、基礎実験を行った。 患者の同意を得てヒトHLA抗体陽性患者血清を収集し凍結保存した。健康な成人の同意を得て、コントロールとして血清を収集し凍結保存した。 研究協力者であるフロリダ大学Juan C. Scornik教授を訪問し、我々の研究計画の立案、実験系の確立、データの解析につき助言を頂いた。
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