移植医療における超急性拒絶反応は、移植片に対して反応する既存抗体が補体を活性化し細胞障害を引き起こすと考えられている。 HLA抗体感作患者血清を用い、リンパ球に対する反応をフローサイトメトリ及びcomplement-dependent cytotoxicity (CDC) testにて計測した。この結果、Tリンパ球に対し、結合IgG量とCDC testとの間に有意な相関関係はみられなかった。またC3b活性は結合IgG量、IgGサブクラスによるのではなく、血清/リンパ球の組み合わせで決定された。すべての患者において優位なIgGサブクラスはIgG1であった。C3bはほぼすべての患者で陽性であり、最も鋭敏な補体成分と考えられた。またC4d、C5bも有用なパラメータであった。 IVIGはHLA抗体による拒絶反応における細胞障害を阻害する効果があると報告されている。IVIGを用いた拒絶反応抑制メカニズムを検討した。IVIG は臨床で行われている大量ガンマグロブリン療法に準じ、32mg/ml 使用した。この結果、IVIGは様々な特異性を持つHLA抗体の免疫グロブリン結合を阻害しなかったが、対照的にIVIGは用量依存性にC3b活性を抑制した。 IVIGはHLA抗体レセプターに結合しその活性を阻害するのではなく、HLA抗体により活性化された後の補体系を抑制することが示された。 当研究の結果、通常の仮説に反しCDC test、結合IgG量、IgGサブクラスは補体活性化の予測因子としては精度が低いことが示された。またHLA抗体の補体活性化を計測するために最も適したパラメータはC3bであり、精度の高い新たな移植患者選択システムとして使用可能である。IVIGはHLA抗体により活性化された補体系を抑制することが示され、免疫感作患者に対する移植医療を進歩させる可能性がある。
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