研究概要 |
老化に影響を与える遺伝子群の同定・解析・治療への応用を目的に、我々グループは、平成16年度萌芽研究によって細胞周期遺伝子BubR1の低下は、老化現象を起こし血管系においても老化の原因になることを解明してきた。 これまでに細胞周期遺伝子BubR1の発現を減少させたマウスの表現形は、老化であることが明らかとなり、(Jan van Deursen et al.2004 Nature genetics)その際Nitric oxide synthase activityが低下することが明らかにされている。(Matsumoto, Jan vanDeursen, Katusic et al, 2007 Stroke)BubR1遺伝子が動脈効果病変にどのような影響を与えるかを検討し、その結果を踏まえた老化制御に対する治療法の開発を目指した。 1.初年度においては、若年ドナーと老年ドナーからのヒト大動脈平滑筋細胞を用いて、老化に伴う細胞周期遺伝子BubR1発現の減少とNitric oxide synthase activityの低下を検討した。さらに若年マウスと老年マウスを用いた実験でも老化に伴う細胞周期遺伝子BubR1発現の減少を確認した。また病理解剖標本より提供された、動脈硬化血管および正常大動脈血管を用いて、動脈硬化に伴う細胞周期遺伝子BubR1発現の減少を確認し、学会報告した。6th Annual Academic Surgical congress (Guntani, et al平成23年2月、アメリカ) 2.本年度は、初年度の研究成果を論文発表した。(Guntani, et al J Surg.Res.2011 Sep;170(1):143-9.) また研究目的に記載した(1)ノックアウトマウス(BubR1 hypomorphic muse)の作製に成功し、分子機構の解明及び動脈硬化病変に対する影響の解析を行っている。ヒト大動脈平滑筋細胞のみならず内皮細胞の増殖、内膜肥厚と細胞周期遺伝子BubR1発現の関連を検討した。 (2)臨床検体での上記遺伝子分子機構の解明を目的とし、手術時採取した大動脈標本及び剖検時の大動脈標本を用い、ヒトにおいても分子生物学的システムが働いているか解析する。(688字)
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